にっせん奮闘記

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UD授業入門③〜まずは全員参加の環境づくりから〜

 前回は授業のUDのモデル図(小貫悟2014)を基に、全員達成のバリエーションについて記事を書きました。

niwasen.hatenablog.com

「で、結局何をすれば良いの?」ということで、今回から各階層毎に授業づくりのポイントを書いていこうと思います。

 今回は、「参加階層」におけるつまずきと、それに対する手立てについて書いていきます。

 

 

参加階層におけるつまずきとは

 みなさんのクラスは全ての子が活動に参加していますか?指導書の「◯◯しましょう。」という指示に対して、すぐに取り組める子とそうでない子がいます。具体的な姿としては、

立ち歩き

寝る

逃げる

関係ないことを口走る

固まる

他のことをしている(手遊び等)

こっそりサボる(話し合っているようで話し合っていない、ノートに意見を書かない等)

などが挙げられます。この「参加階層」におけるつまずきを抱えた授業を続けると学級崩壊に近づいていきます。

 原因としては「集中力の無さ」や、「見通しが持てないことへの不安感」などがありますが、結局は「やりたいと思えない」ということに集約されるのではないかと思います。子供がやりたいと思えるようにするには、「環境設定」と「授業のしかけ」が大切です。本当は後者について熱く書きたかったのですが、書いているうちに長くなってしまったので、今回は「環境設定」について書きました。授業のしかけについては次回書きます。

環境設定でバリアを減らす

小貫悟は参加階層におけるつまずきに対して、

①クラス内の理解促進(人的環境を整える)

②ルールの明確化(脱暗黙のルール)

③刺激量の調整(スッキリ集中)

④場の構造化(わかりやすい場づくり)

⑤時間の構造化(見通しをもたせる)

の5つの指導方法の工夫をあげました。それぞれについて簡単に説明していきます。

①クラス内の理解促進(人的環境を整える)

 「一生懸命やることをバカにする」「間違いを笑う」といった雰囲気のあるクラスでは「頑張りたくても恥ずかしい」「分からないって言えない」と考えてしまい、参加しにくくなってしまいます。安心して授業に取り組めるような人的環境を整えてあげることで、多くの子が活動に参加しやすくなります。このことについて書かれた本があるので紹介しておきます。

 

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②ルールの明確化(脱暗黙のルール)

 野球に参加するには、野球のルールを守らなくてはなりません。「ルールを守る」ことは参加の大前提です。しかし、ルールを守った体験が乏しいと、「ルールは守るもの」という感覚が希薄になってしまいます。また、ADHD傾向の子にとってはそもそもルール自体のハードルが高かったり、ASD傾向の子にとっては明文化されていない暗黙のルールを理解するのはとても難しかったりします。「ルールは明確に示す」「守れないことはルールにしない」「ルールを守らせるためには行動へのアプローチではなく先行条件へのアプローチを行う」「ルールを守る良さを経験させる(SST)」といったことを意識することで、活動に参加しやすくなります。私が読んだ本の中ではこの項目については以下の本が分かりやすかったです。

https://www.amazon.co.jp/特別支援教育の知識で全員を育てる!-ユニバーサルデザイン学級への6原則-前田智行/dp/B07MKPVT1C

https://www.amazon.co.jp/策略―ブラック授業づくり-つまらない普通の授業にはブラックペッパーをかけて-中村-健一/dp/4182400151

③刺激量の調整(スッキリ集中)

 最近は「ユニバーサルデザイン」を掲げる自治体も増えてきて、「黒板周りに余計な掲示物を貼らない」「机の脚にテニスボールをはめる」といったものがこれに当たります。前者は視覚情報を後者は聴覚情報を減らし、授業内容に集中するための取り組みです。意識しているのと意識していないのとでは活動への取り組みやすさが全然違います。教師の言葉を減らすのもこの項目に当たると思います。

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枚方市の取り組み

④場の構造化(わかりやすい場づくり)

 みなさんの学校の理科室には、どこに何が置いてあるか分かりますか。しまう場所がわからないと散らかしてしまったり、どこにあるかが分からなくなってしまったりします。そして、そういった子はワーキングメモリが低いことが多く、物を探している間に授業に遅れて行ったりします。

 また、「どのように人が動くのか」といった動線を意識した場づくりも、体育や理科などでは大切です。

⑤時間の構造化(見通しをもたせる)

 ASD傾向の子にとっては、今から何をするのかが分からないと不安になってしまいます。授業の流れを黒板に掲示しておくことで、「この授業では何を何分行う」「あと何分で次の活動に切り替わる」という見通しがもてて、活動に参加しやすくなります。

まとめ

 このように、環境に対してアプローチすることで子供達は活動に参加しやすくなります。しかし、これだけでは、真に参加しているとは言えません。上記事項はあくまで前提条件です。最初に書いた通り、こちらがいかに条件を整えてバリアをなくしたところで「やりたいこと」でなければ「やらされていること」でしかありません。いくら車の整備をして道の舗装をしても、エンジンがかからなければ走りません。次回はそのエンジンのかけ方、授業へのしかけ方を書いていきます。

↓次回

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