UD授業入門②〜全員達成なんてできるの?〜
↓前回の記事
授業のユニバーサルデザインでは
「どの子も楽しく”わかる・できる”授業を目指そう」
ということを理念に掲げています。
現在学生で教職を目指している人は、「そんなの当たり前だろ」と思うかもしれません。どの研究会にしても、あえて明文化はしていませんが、「賢い子だけが輝く授業をしたい」なんて考えで研究を進めているところは無いはずです。
しかし、現場で30人前後の子どもたちを相手に授業をした経験があれば、この当たり前がいかに難しいかを実感しているかと思います。「そんなの無理だよ」と諦めてしまっている人もいるかもしれません。私も1年目は少し諦めてしまっていました。
そんな中、今日ご紹介するのは、授業の達成度をグラデーションで示した「授業のUD化モデル」というものです。子供の「できるか、できないか」にあるバリエーションを整理しておくことが、授業改善につながっていくのです。
①「わかる・できる」を4つの段階に分ける
下に示すのが、小貫先生の提唱する授業のUD化モデルの図です。
授業についていけない児童をさらに細分化し、各階層に合わせた指導方法の工夫がまとめられている図になります。
②参加階層におけるつまずき
内容以前に学習活動そのものができない児童がいます。例えば、
情緒的課題
・関心にムラがあり、興味がない(苦手な)学習では床に寝てしまう。(他にも、手遊びをしているなど。)
・気持ちのコントロールができず、休み時間のけんかをずっと引きずって怒っている。
・集中力に課題があり、指示を聞いておらず何をすれば良いかわからない。
・ずっと座っていることができず、立ち歩いてしまう。
能力的課題
・抽象概念が育っておらず、「感想を書きましょう」「気づいたことを書きましょう」のようなオープンクエスチョンに対し、何をするべきなのかわからない。
・ワーキングメモリが少なく、指示を覚えていられない。
・日本語がまだあまり理解できておらず、何をして良いかわからない。
…などのように、あげるときりがありません。しかし、一つ一つ何が本質的に課題なのかを考えることで全体指示の中で解決することもあります。
例えば、「ずっと座っていることができず、立ち歩いてしまう」のであれば、「ずっと座っている」授業を変えると、他の子にとっても参加しやすくなります。参加層でつまずいている子にとっては学校の時間は退屈でたまらないでしょう。全員が活動に参加できるしかけは授業UDにおいてとても大切です。
また、「学習環境」「人的環境」のような「環境へのUD的な支援」を行うことで、参加階層のつまずきを減らすこともできます。
③理解階層におけるつまずき
参加できたら次は「わかる」という段階です。中には「参加していないようだけど聞いていて理解はしている」という強者もいますが、LD傾向の子にとっては「参加しているし、一生懸命頑張っているのにわからない。」ということが起こっているかもしれません。
「わかる」または「わかった気分にさせる」には、「焦点化」「視覚化」「共有化」という3つの視点がとても大切になってきます。これについてはまた後ほど記事を書きたいと思います。
「何をもってわかったとするのか」→「焦点化」
「分かるための支援の一つ」→「視覚化・多感覚化」
「分かるための支援でもあり、活用の練習にもなる」→「共有化」
④習得・活用階層におけるつまずき
ここからは、いわゆる平均的な子にも多く見られるつまずきになります。1回の授業ではなんとなくわかった気になっても、うまく説明できなかったり、次の日には忘れていたりするものです。そこで、共有化の際に多くの子に言語化させて活用を促したり、常時活動や学びの構造化を図ることで内容を身につけさせていったりする必要が出てきます。
授業UDとは、苦手な子のために授業のレベルを下げることではありません。教師のしかけによって多様な子をそれぞれの学習のステージに乗せて、その子なりの「分かる・できる」を目指していくのです。
⑤ここ1年で読んだ本を独断と偏見で階層ごとに分けてみた
ここ1年間、にっせんはUDを追いかけて学んできました。そうすると、授業に関する本を読んでみた時に、「だいたいどの階層のためになるかな」という視点で読むようになりましたので、独断と偏見でオススメの本をまとめてみました。全て「主に」と入っているのは、当然どの本もその階層以外にも活用できる内容がたくさん書いてあるからです。授業UDに関する書籍はそれぞれの階層を意識して執筆してあるので別の欄を作りました。
「買うの迷っているんだけどどうだった?」というものがあったら、リプをいただけたらお答えします。もちろん独断と偏見です。
この記事を読んで、少しでも興味の湧いた人はぜひ何か1冊購入して、一緒に学びましょう。にっせんの記事なんかより、ここで紹介している本を読んだ方が53万倍ためになりますから。
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